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暑くて窓を開けっ放しにしたり、夜遅くまで外出する機会が増えたりすることで一般的に夏は犯罪の増える季節とされる。
長く現場に身を置く巡査長はこの『夏に猟奇犯罪が増える傾向』を肌で感じていた。
『不快なくらい高い気温は人をイライラさせるので人は攻撃的になる』『温かい気温の方が人々は屋外で過ごすようになり、他人と交流する機会が増える。そのため他者と対立する機会も増える』など、理由はなんとでも後づけできる。ただ、彼にはそんな理屈を抜きにした『何か』がこの世には存在するように思えてならなかった。
『だって夏なんだもの』
そう言って容疑者の女は自身の心臓にためらうことなく包丁を突き刺した。
彼女を突き動かした『何か』は確かに存在すると、彼は確信していた。
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