告げる

1/1
前へ
/5ページ
次へ

告げる

放課後、俺は理事長室に呼ばれた。 俺は基本的に理事長という役職の人間が嫌いだが、当然俺より偉いので従わないわけには行かない。まぁちゃちゃっと終わらせて録画してあるテレビ番組でも見よう。 そう心に決めているうちに理事長室の前まで来てしまった。 「失礼します。」 「ああ一ノ瀬君か、急に呼び出してすまないね」 「いえいえ、用件はなんなのでしょうか」 お前が呼び出したんだろうが、早く言えよ 「実はね、明日から君のクラスに転校生が来るんだ。私の可愛い甥でね、良くしてくれると嬉しいよ」 「はい、了解いたしました。」 それだけ行って俺は逃げるようにして理事長室を後にした。 転校生 甥 理事長 急 1年S組 俺の頭の中で単語がめぐる…。 大丈夫、転校生はアイツじゃない。 状況も似てるけどアイツじゃない。 そもそも毎年1年S組を希望していたのはこの時のためじゃないか。 大丈夫、可愛い教え子たちに俺達と同じ轍は踏ませない。 大丈夫だって言ってんだろ! 俺はもうあの時の何もできなかった俺じゃない。 転校生の好きにはさせない。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加