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あたしには、片思いしている人がいる。
彼の名前は岸大輔。そして、彼にも好きな人がいる。私の親友である、佐藤さくらだ。さらに最悪なことに、この二人は両思いだ。
さくらはいつも好きな人を聞いても教えてくれない。だから、あたしも岸くんが好きだとさくらに教えたことは一度もない。でも、さくらの目線を見ていたら、すぐに岸くんが好きだとわかった。岸くんもそうだ。本人は気づいていないようだが、さくらと話している時だけ、いつも耳が赤い。
あたしが岸くんを好きになったのは幼稚園の頃。転んだあたしに手を差し伸べてくれた瞬間からあたしは彼が好きだった。そして、小学校の高学年になる頃には、彼のタイプが真っ直ぐで素直な子だとわかった。この時のあたしは、前髪が長くて、いつも下を向いているような暗い女の子だった。でも、彼に好かれたくて可愛くなるためにものすごい努力をした。
中学は同じ小学校の子のほとんどが西中だったけど、岸くんが東中だと聞いて、あたしは親に頼み込んで東中に進学した。高校も私の偏差値じゃ普通の高校にしか入れなかったけど、死ぬほど努力して彼と同じ、県で一番の高校に合格した。
だけど、暗い性格だけはどうしても治らなかった。だから、高校に入ったら、彼が好きになりそうな子のそばにいて、その子の真似をして自分の性格を変えようと思った。それがさくらだった。人というのは同じような性格や雰囲気を持つ人と気が合うと思うらしく、さくらはあたしの事をいつの間にか親友と呼ぶようになった。でも、あたし達は似ているんじゃない。
ただ、あたしがさくらの真似をしているだけ。
さくらがあたしの気持ちを知ったら、
正々堂々と戦おうよ。とか言うんだろうね。
でも、あたしにはそんな事出来ない。
だって、あたしはさくらじゃないもん。
だから、あたしにはこうする事しか出来なかった。
私はメッセージを開き、文を打って送信した。
『明日の花火大会さ、岸くん誘いなよ。多分、岸くんもさくらと行きたいと思ってるよ』
『明日の花火大会、誰かと行く予定ある?
岸くんさ、良かったら、さくらのこと誘ってあげてくれないかな?行く人探してたんだよね』
あたしは結局変われない。
きっと、明日も一人で花火を見るんだろうな。
どうか、あたしの大切な人達が幸せな時間を過ごせますように。
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