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「痛い。」
舞花はお腹の痛みで目が覚めた。下腹部が重い。痛い。なんなのだ。
たいていの痛みはこらえれる。それなのに声にでてしまう。目の前は真っ暗だ。夜中なのだろうか。
寝転がってはいられない。四つん這いになり、唸り声がもれる。ふとシーツを見た。
「赤い!」
シーツが真っ赤になっている。生理はまだのはずなのに。血の量を見てさらに舞花はどうしていいのか、わからない。
「痛い。痛い。咲花、助けて。」
おなかが痛い。痛すぎて目があけれない。まぶたにはシーツの血がこびりついている。
「舞花、どうしたの?」
咲花が顔を出した。
「痛い、痛いの。おなかが痛い。こんなの初めてなの。血がでてるの。」
しゃべりながら、ますます不安になる。目をあけることもできなければ、息をすることもできない。パニックというのだろうか。上も下も左も右も何もわからない。
「生理が来たのね。大丈夫、落ち着いて。ゆっくり息を吐こう。」
咲花の手が背中をさすっている。ゆっくり呼吸をしている。
「そんなの無理だよ。痛いの。」
パニックで大声を出す。その自分の大声でさらに舞花はパニックになる。
「どうして、私ばっかりこんな目に合うの。」
パニックの舞花に咲花は根気よく落ち着いた声でゆっくり息を吐こうと言っている。そして咲花自身おおげさにゆっくり呼吸をしている。咲花の呼吸に少しずつ合わせることでなんとか長い息をはくことができた。するとゆっくり息をすうことができ、そうして少しずつ落ち着いてくる。
咲花が背中をなでてくれていることに気づいた。温かさが伝わってくる。
「生理はこの前終わったばっかりだよ。なんで。なんで私だけ。私が何したって言うの。」
そうなのだ。生理痛がこんなにひどいこともなかった。こんなに頻繁にくることもなかった。どうして。食べ過ぎてたから?これも自業自得?
「大丈夫、力ぬいてごらん。私がいるよ。痛くないよ。」
気づけばもう片方の咲花の手を強く握りしめている。力をぬいて大丈夫なのだろうか。痛みに押しつぶされる。
「今まですごく頑張ってたものね。無理してたものね。もう大丈夫だから。大丈夫。」
咲花のゆっくり落ち着いた声と背中を撫でる温かい手。魔法のように意識が遠ざかる。
「咲花、ずっとそばにいて。」
日常も幸せも、どんなに頑張っても、意外なところからすぐに簡単に壊れてしまう。だから、壊れない何かがほしいのだ。咲花だけはずっとそばにいてほしい。
「うん、ずっと一緒にいるよ。」
願いは通じたのかな。咲花の温かさを感じながら身体が軽くなるのを感じていった。
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