何てことはない日でも、こんなに君を想ってる

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「なぁ、道國」 「何だ?」 あれから小一時間は経っただろうか。埃臭い倉庫で片付けをしてれば、オーシャンブルーの香りが舞い、鼻腔を心地よくつついてきた。 「飯行こうよ」 「あぁ、構わないぞ」 「やった! ゴチな!」なんて、星司はあどけなく頬を綻ばせてーー余りにもな不意打ち。自然に緩んでしまった口元に反吐が出る。 そして、コイツはまた勝手に俺のトリートメントを使ったらしい。俺が好きな香りを漂わせて歩く後ろ姿。嫌悪感より好奇心が先に軍配を上げた。 「気に入ってるのか、それ」 「ん~?」 「俺の洗面道具を勝手に使うなと言っただろうに」 「いいじゃん、別に。師範のものは愛弟子のもの。何でも共有大歓迎にしといてくれねぇと」 (ぐッ……! くそ、胸があぁッ……) だから、その悪戯な笑顔を今すぐに止めてくれと。こんな至極下らない事で微笑ましさを隠せない自分が許せんのだ。女じゃあるまいに、そんな萌えを俺に提供するな。 「道國ってセンスいいよな」 「何のだ?」 「何に置いても。学び甲斐あるっつーか…… 薙刀以外にも、お前を参考にしてる所があってさ。へへっ……」 (ぐふっ、血管!! 血管がブチ切れるぅッ!!) 懐柔なんて許さん。そこに絆される程、俺は安くないぞ星司。 しかし……この血の滾りは一体、何なのだ? 漲る愛憎かッ、愛憎なのかッ!? 嗚呼ッ……ちくしょう。畜生畜生畜生ッ!! 照れ笑いはお前の最強の武器だよ今すぐに素振りして来い頼むからッ!! 「例えば?」 「ん?」 「例えば何を参考にしているんだ?」 嗚呼、神よ。憎悪より、好奇心だけが軍配を上げ続けるこの理不尽な心境をどうにかしてくれ。堪らなくむず痒い。でも、なんだ。この悶える感覚が辛抱堪らん…… 「それ聞くか「聞くんだ!!」 食い気味になってしまった俺を誰か殴り飛ばしてくれ。 愛弟子を困らせたくはないのだが……否、そんなの建前だと心に潜む悪魔が高笑いしている。 本当は物凄く困らせたい。寧ろ、俺に醜い泣き顔を晒して、俺まで困り果ててしまうような救いない結果を求む。 星司よ、こんな風に俺を壊した罪は重いぞ。そんなお前に今すぐにでも夢の落とし穴を掘ってやりたい。または流刑だ、流刑。 そうしたら、こんな葛藤の毎日からオサラバ出来ると言うのにーー
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