彼の生まれた日

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「あ〜〜完っ全に落ちた〜」 落ち込む彼。 しかし、数日後、奇跡がおこる。  普段はセールスの手紙ばかりで気にも止めない ポストの中を彼が覗いてみると 例のヒーローの会社から手紙が来ている。 「!!」 急いで手紙を開けて見る。そして、、、 「ご、合格!?」 確かに"合格"と、書いてある手紙を彼は 何度も読み返し、 「僕、、、合格したんだ、、、。」 「ヒーローになれるんだ、、、やった〜〜!!」 手紙をギュッと握りしめ 大声を出して喜んだ。 入社の日。 「西郷くん!ワインレッド!」 そこでは合格した数人が並び、順番に役職を発表されていた。 「大久保くん!エメラルドグリーン!」 同じく合格した面々は 流石、体力測定で好成績を残し目立っていた 顔ぶれが揃う。 「あ、あの人、遠投の人だ!」 まるで有名人を見るかのように 輝いた瞳で見つめ、凄いな〜と 目一杯の拍手を送る彼。 そして、全員の決定を喜んだ。 しかし、 「よし!じゃあ、ポチまで決まった所で、これからみんなに能力を与える!」 ワインレッドの愛犬までキャスティングは決まるが 最後まで彼が呼ばれる事は無かった。 去ろうとするみんなに彼は問う。 「あの〜すみません。僕は、、、?」 振り向いた風格のあるヒーローの会社の社員の男性。 しかし、どう見てもヒーローには不釣り合いな彼の風貌を見て不思議そうに横にいる女性へ尋ねる。 「彼は?」 「え〜データによりますと、、、」 「見た目は普通だが、、、」 「はい!普通です!」 それを聞いた男性は彼に確認をする。 「君!合格通知はあるのかね?」 彼はポケットの中からゴソゴソと 合格通知を取り出し手渡す。 「はい!」 それを受け取ると、そこにしっかりと書いてある合格通知と名前、彼の写真の顔と彼を照らし合わせ、 なにやら女性とボソボソ耳打ちのような話をする。 「すまないね!何かの手違いだと思う!こうしてもう役職も全て決まってしまった事だし!」 肩を落とす彼。 「まぁ、ポチの糞位なら空いているんだがね。」 なんとも気の利いたアメリカンジョークで男性が場の雰囲気を和ませる。 「AHAHAHAHA!」 場がどっと湧く。 それらも全てがまるでアメリカンヒーロー映画の一幕のようだ。 しかし、そんなアメリカンジョークも 真面目な彼にとっては 輝いたヒーローの仲間になれるチャンスにしか見えなかった。 「はい!お願いします!」 彼の答えに場は一気に静まりかえった。 こうして、彼には ヒーローの能力が与えられるのだが 急ごしらえの彼には身体にしっかりとフィットした コスチュームなどは用意されず ポチのうんこの仮面のみが贈呈された。
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