僕らをつなぐひとすじの、

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 初めて碧斗(あおと)くんと会ったのは、彼が七歳の時でした。 「リアムと申します。今日からあなたの家族です。仲良くしてくだされば幸いです」  碧斗くんは、目は真っ黒ですが、三代前に国際結婚をした関係で、金に近い薄い髪色をしています。身長が低いことを気にしているので本人には言わないでほしいと、事前にお母様から言付かっていました。 「幸いです、ってなに?」 「嬉しいです、という意味です」 「だったら最初からそう言ってよ。もっと弟らしくしてよね」 「私が兄ではないのですか?」 「僕がお兄ちゃんでしょ? 先にいるんだもん」  私は、なぜこのお屋敷にやってきたのかを説明しました。碧斗くんのおうちは裕福ですが、いつも一家団欒という家庭ではありません。お父様は仕事の都合で別の場所に住んでいます。お屋敷にいるのは、病弱で臥しがちなお母様と、少し足の悪いおばあさま。住み込みのお手伝いさんもいます。けれども碧斗くんと遊ぶような年頃の子はおらず、小学校で初めて外の世界へ出たばかりです。それを心配したお父様お母様が、少年型アンドロイドである私をもうひとりの家族として迎え入れることを決めたのでした。いつでもそばにいられない自分たちの代わりとなって碧斗くんを守るよう、特に言付かっています。彼を守るべき役割とすれば、当然兄です。 「僕を守るからお兄ちゃんしかないって決めつけるのはよくないよ。お兄ちゃんを守りたい弟は我慢するしかないの? 弟に守られたいお兄ちゃんも我慢?」  碧斗くんは、うるうるした瞳で小首を傾げます。私は瞬時に判断しました。 「私は碧斗くんの弟です」
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