僕らをつなぐひとすじの、

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 それを聞いた碧斗くんは、珍しく言葉を詰まらせます。その大きな黒い瞳はみるみるうちにゆらゆらと歪みの中に入っていって、私は彼が泣いているのだと悟りました。はらはらと零れる涙はまるで宝石のようにキラキラと輝いています。日差しが暖かく、窓際にいる碧斗くんの頬にも、ちょうど光が当たっているのでした。 「碧斗くん、どこか痛みますか?」  碧斗くんは泣き笑いになりながら小さく小さく、かぶりを振ります。 「全然痛くない。リアムは賢いはずなのに、バカだなぁ」 「……私は馬鹿ではないです」  思わず反論しても、碧斗くんはどこか嬉しそうに笑うだけです。笑いながら、また涙をほろほろと零しました。  七年が過ぎ、お父様がお屋敷に戻ってくると間もなく、碧斗くんは十四歳になりました。  背が低いことを気にしていた兄はもういません。ついに昨年、身長を越されました。  出会った頃より友達も多く、よく笑うようになりました。一葵くんと最初に友達になれたことは、碧斗くんにとってよい出会いだったようでした。彼がほかの友達も運んできてくれたと言えます。  では、私という弟は必要なかったのでしょうか? そう問うと、碧斗くんは「おまえ意地悪くない? 友達と家族は別だろ」とニヤニヤします。  まだ少し幼い頃、碧斗くんは私に自分のさみしさの内訳を話してくれました。お母様が病気がちで一緒に遊べなかった幼少期がとてもつらかったこと。お父様が家にいない間、いつも孤独を感じていたこと。構ってくれるおばあさまにはとても感謝している反面、切なさはどうしても拭えなかったこと。そして、七年の間にたくさんの想い出を作りました。これまで過ごしてきた時間を思うと、私は誇らしい気持ちでいっぱいになります。 「じゃあ、帰りは明後日ね。迎えの時間は学校からのメールにあるだろ。遅れんなよ?」
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