2. 2025年3月13日

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 マディソンが住んでいるのは、ロンドン郊外の更に外れ、周りを緑と湖で囲まれた一角の、木でできた小さな家だった。マディソンには、私よりも2つ年下のスノウという娘がいた。スノウはマディソンの友人が産んだ子供だったが、もともと情緒不安定なところがあったその友人は、スノウが3歳の時に自ら命を絶ったのだという。生前の友人の遺言通り、マディソンはスノウを養子として迎え入れ、今まで育ててきたらしい。  家の前の広い庭にキャンバスを広げ水彩画を描いていたスノウは、私の姿を見とめるなり、笑顔を浮かべて駆け寄ってきた。 「あなたがオーロラね。会えて嬉しい」 「私もよ、よろしくね」  握手を交わした後で、スノウは湖のそばにある小屋へと私を案内した。屋根の上では、茶虎の猫が昼寝をしている。  「あの子は……」 「飼い猫のカルメン。人懐っこくて良い子だから、すぐに仲良くなれると思う」  スノウはそう言ったあとで、小屋の戸を開けた。中には鶏が数羽と、豚が一匹いた。 「この子たちって……」  その先の言葉を継ぐことが躊躇われ、言い淀んでいる私の気持ちを推し測ったかのように、スノウは彼らについての説明を始める。 「アレは卵を産んでくれる子たち。この豚はエリーゼっていうんだけど、ペットだから食べたりはしないの」 「そうなんだ。あ〜、安心した」  豚の頭を撫でながら、彼女たちが食用ではなく、純粋に愛されるだけの存在であることに感謝した。 「ふふ。あなたは想像してた通りの人だわ。ユニークで素敵な人」  スノウは言った。 「あなたも想像してた通りの子だったわ」  マディソンからスノウの存在を聞かされた時、きっと私よりしっかりしていて、マディソンのように才能のある女の子なんだろうと直感的に思った。スノウはまさに、私の想像をそのまま絵に描いたような女の子だった。  スノウは私の手を引き、外の湖の前まで連れて行った。 「湖で……釣りってできる?」  私はスノウに尋ねた。 「やろうと思えばできるけど……大体藻みたいなのしか釣れないわ。この間、大きな白いコブラみたいなのが釣れたけど。試しにやってみる?」 「ううん、遠慮しとく」  即答した私の頭に浮かんだのは、以前映画で観た、白い巨大な蛇がジャングルの中でトグロを巻いているシーンだった。恩人である母の恋人に会いにロンドンにやって来てアナコンダに食べられるなんて、悲惨な最期もいいところだ。
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