≪16≫ 永遠の夏

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「父さんと母さんは表向き、事故死扱いになっているらしいけど、でも、多分、」 そこまで言葉を唇に乗せると、聖は顔を伏せた。 「母さんが、父さんを道連れにしたんだろうな」 外されたままの視線が哀しい。 俺、やっぱり馬鹿だ。なにも知らなかった。なにも、なにも。 「早紀の手紙、な、……俺が書かせたんだ。まあ、まさかあんな小細工をされているとは思わなかったけど。でも、良い起爆剤にはなっただろう。後悔、しただろう?」 フラッシュバック。 『ゔああああぁぁあ゙あァァ!』 そうか、俺はまた一人で勝手に勘違いをして、本当に馬鹿だ。 あの時、早紀はどこを見ていた?なにに怯えていた?よく思い出せ。彼女の視線の先には、聖がいたじゃないか。 「早紀や綾がしていたことも、千秋、お前がしていたことも知ってたよ。全部、ぜんぶ。俺は知ってたよ」 不意に戻された視線が冷たい。漆黒の瞳に映る世界が見えない。 「幸次は、アイツだけは、…本当に何も知らなくて。殺すつもりなんてなかったんだけどな。でも、正直過ぎる奴だから、だから、」 「……聖?」 「あの週刊誌の記者に目をつけられた」 「!!」 「目をつけられて、全部、喋ろうとしていたから、……俺が、」 夏の爽やかな風が、聖の前髪を浚っていく。 「川で見つかった死体、あの記者のなんだ。俺の服を着せて、首だけ切って。だからもうすぐバレるとは思うけど。でも大丈夫」 心臓が痛い。心臓が煩い。 「その前に、終わるよ」 ふわりと元に戻った髪が陽に透ける。いつも、いつの日も穏やかだった聖。でもそうじゃなかった。俺達と違って、ほんの少し、感情が奥の方にあっただけ。隠して過ごしていただけ。 本当は、誰にも止められないような激情を持っていたのに。 ぽたり、ぽたり。
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