溶けない怒りに砂糖を加える

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 僕は愕然とした。  数百年。  どう考えても僕は死んでいる。  人類の知恵や熱情を全て注ぎ込んだとしても、固体牛乳の発見は、早くても数百年後。  つまり僕は死んでいる。  愕然とした。  何故、僕は死ぬのだろう。  人間が、たった80年程度しか生きられない生き物だから、僕は溶けないアイスを食すことなく、死ぬ。  これはもう、僕が悪いとかそういう次元でもなく、人間が死ぬものであるから悪いのだ。  ――ゆるさない。  僕は人間という脆弱(ぜいじゃく)にして不自由な(しゅ)を、死という理不尽な摂理を許すわけにはいかないのだ。  ――なんとかならないのだろうか。  しかし、憤ってばかりいても、解決はしない。  怒りは全ての原動力だが、解決策自体には至らない。  茫然とした意識の中で、僕は考えた。  考える。  考える。  考えた。  気が付く。  ――つまり、死ななければいいのだ。  極めて単純な話だったのだ。  僕が死ななければ、固体牛乳の発見まで見届けられる。  つまりは、そういうことだ。  なので、僕は不老不死を目指すことにした。
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