溶けない怒りに砂糖を加える

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 しかし、固体牛乳を諦めるわけにはいかない。  不合格通知を手に、僕は悩んだ。  ある程度悩み、気が付く。  ――よく考えれば、別に固体牛乳を発見するのは、僕でなくとも問題は無い。  気付きと同時に、視界は開ける。  つまり僕でなくとも、誰かが宇宙の何処かで固体牛乳を発見してくれさえすれば、それでアイスは溶けなくなるのだから、必ずしも僕が発見する必要なんて無い。  ということは話は極めて単純で、宇宙飛行士あるいは宇宙開発機構に探してくるよう頼めばいいだけなのだ。  しかし疑問は湧く。  (いち)学者の頼みなど、聞き及んでくれるものだろうか。  たぶん一蹴される。  学会で固体牛乳の必要性を説いた時も、理解者はいなかった。つまり、難しい。  情熱だけでは是正できないというのなら、宇宙開発機構の方向性と情熱を傾けるだけの影響力、そして経済力が必須となる。  僕は考える。  どうすればいいのか。  影響力と経済力を兼ね備えた人間になるには、どうすればいいのか。  暫く考えると、必然的に行き着く。  ――政治家になればいい。  気が付けば、あとは行動だ。  怒りは全ての原動力。  なので僕は、政治の道を志すことにした。
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