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海の近く
六畳間の窓際で
眠る君を見てた
頬の下に両手を敷いて
少し脚を丸めて
幸せそうな寝息
実家を嫌ってた
帰らないと言ってた
こっちで就職すると言ってた
実家は
海に近いと言ってたね
岩場はあるの?
牡蠣はいるの?
そんなことを訊いた
たとえば日に一度
おかずが納豆だけの日があると
そんな家には帰らないと言ってたね
結局
下宿を引き払った君
ねえ
実家には帰らないと言ってたよね
がんばって帰らなかったよね
波の音がするたびに思い出すんだ
君のしたたかさは
本物だったはずだと
勝手に信じてるよ
祈りみたいに
2023年3月9日
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