羽音の終わり

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 でも、もうなんだっていい。  蚊も花火も冷房も泣き声も、なんだっていい。  とにかく僕は眠たいし、眠りたいんだ。  その他のことは、どうでもよくなってくるほどに眠たいのだから、だからもう、この泣き声の主も、誰も彼も皆、僕のことなど薄情者と思って忘れてくれて結構だ。  眠たい。  とにかく眠たい。  眠すぎて、もう寒くもない。  わけがわからない。  もう羽音も遠くなってきた。  花火と泣き声だけが聞こえてくる。  わけがわからない。  どうして僕は死ぬんだ?  わけがわからない。  僕にはさっぱりわからない。  どうしてなのか、さっぱりわけがわからない。  頼むから、花火の音に負けないくらい、もう少しだけでいい、泣き続けてくれ。  頼むから。 〈了〉
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