羽音の終わり

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 羽音が聞こえる。  蚊が飛んでいるのかもしれない。  気が付かなければこのまま穏やかに眠れた気もしているが、気が付いてしまった以上、どうしようもない。  甲高い風切り音が恨めしい。  多少の血液なんて勝手に黙って摂っていけばいいのに、どうして蚊はわざわざ音を立てて自己主張をするのだろう。  上手いこと痛みも痒みも騒がしさも伝染病も関係ない、無害な採血の仕方を修得すれば、蚊の生存率はそれこそ飛躍的に伸びるだろうに、何故そういったステルス性を会得する方向には進化しなかったのか。  僕にはさっぱりわからない。  蚊の進化の不思議など僕にはどうだっていいのだけども、今はその存在に気付いてしまったことが問題だ。  それだけでまた、寝苦しくなってしまう。  僕はただただ眠りたいだけなのに、蚊の進化の方向性が間違っていたせいで、上手く眠りにつけないじゃないか。
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