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「うわっ、やめろ! 暴れるなって!」
遠くの方で、カイトの声がした。
そして、脳が揺らされるような衝撃があって、山月の首は解放され、地面に倒れた。
息ができていた。
まだ、死んでいなかったのだと自覚する。
そう安心すると、急に全身に痛みが走った。アドレナリンのせいで気付かなかったが、体中の肉が腫れあがり、所々、骨が折れているようである。
悶えるように転がり、痛みに耐えていると、九の声が聴こえた。
「なんなんだ、てめえっ! やめろ、やめろっ!」
山月は、痛みを堪えようと草むらの中に、顔を埋めていたが、少しだけ首を振って、辺りに目を配る。
ナインが、九と戦っていた。
ナインは、まるで、熊か狼のようなケモノに見える。
野生のケモノが人間を襲うがごとく、ナインが一方的に九を攻め立てていた。
「ナ、ナイン……。キ、キミが、戦うことはない……。た、助けないと……早く……」
気ははやるが、体が動かない。立つことすら出来ない。
(な、何か……何か、出来ることはないのか……)
その時、山月の頭の中に、忽然と、一つの忍術が思い浮かんだ。
虫獣創生。
それは、山月流忍術の秘伝中の秘伝だったが、山月は、その術を使ったことがない。
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