50人が本棚に入れています
本棚に追加
2.特 刑
雑木林の中は、薄暗かったが、目が慣れてくれば、夜中の二時でも十分に視界が取れた。
つい先ほど、九とともに、中年の男を捕まえてきた山月は、九より数歩下がったところで、緊張していた。
「おい、おっさん、なんで、こうなったのか、わかるよね?」
九から、おっさんと呼ばれた中年の男は、木に縛り付けられていた。殴られて、顔が腫れている。
「な、なんだ、てめえ! こんなことして……ぎゃっ! いてててっ!」
まだ反抗的な態度の男の太ももに、九が小刀を刺した。
男の名前は、斎藤恒雄。
相田から、特務警官としての任務として、さらうように指示された男である。
山月は、その背景や理由、今回のミッションの最終的な目的まで聞かされていたが、体が動かないでいた。
九とタッグを組む、特務警官としての最初のミッションである。
だからしょうがないという、言い訳と、最初だからこそ、九に舐められないようにイニシアチブを取ってやろうというたくらみが葛藤して、前者が勝ってしまった。
(やばい……。本当に、体が動かないゾ……)
最初のコメントを投稿しよう!