2.特 刑

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 保沢夏美さん殺害事件。  当時二十歳の大学生で、一人暮らしをしていた彼女は、五年前、雑木林の中で、遺体で発見された。  着衣は乱れ、性的暴行を加えられた跡もあった。  その後、容疑者として浮上したのが、斎藤だった。死亡推定時刻の二時間前、バイト帰りで自転車に乗る夏美さんの横に並び、しつこく声をかける斎藤の姿が、雑木林近くの防犯カメラに映っていたのだ。  マスコミも世間も注目する中、ようやく斎藤の逮捕に踏み切った警視庁だったが、送検するも証拠不十分で起訴できなかった。  あれから五年……。 「事件が風化するのを待ってたんだ。殺人事件を犯した犯罪者が、のうのうと生き永らえることは、許さない」  相田から言われたことと、全く同じ言葉を九が、斎藤に言った。 「く……。くそっ……。オレは、犯人じゃねぇ。やってねぇ。検察もオレを起訴しなかったじゃねえか……」 「だから、こうやって、成敗しにきたんじゃないか」 「ど、どういう意味だ?」 「オマエが犯人だって、わかってるんだよ」 「証拠はっ!? 証拠がねえから、不起訴なんだろっ!? ふざけんなよ、コノ……ぐぎゃあああぁぁぁああああっ!」  九が、斎藤の脇腹に小刀をぶっさし、真横に、ゆっくりと裂いた。
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