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「こっちも、そういう意味で言ったんじゃないよ。別にダーツをしてたわけじゃないんだから」
見ると、男はダーツの矢を持っていなかった。カウンターの上に、男のマイダーツと思しき矢が三本置いてある。そのトルピードのバレルには、見たことの無い幾何学模様の溝加工がされていた。
男は、三本のマイダーツとロックグラスを一緒に掴んでカウンターを滑らせ、山月の隣の席に移動してくる。
「キミが、山月くん? SPのスペシャリストっていう人? ダーツも得意なんだって?」
長髪の男は笑っていた。最初の印象とは異なり、愛嬌たっぷりの笑顔で、目尻が垂れ、大きな口から覗く歯は真っ白で、綺麗に並んでいる。
「そんな、ドバトが鉄砲をくらったような顔すんなよ。オレも山月くんと同じ、警官なんだよ。今日、ここで会うことは、相田さんから聞いていたんだ」
「あ……、ああ、そうだったんだ……。キミも呼ばれていたのか」
相田とは、警視総監の相田銀次のことだろう。
写真や映像でしか見たことは無いが、ダンディで知性のにじみ出た相田の顔立ちが頭に浮かんだ。
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