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「オレは、服部九。幼い頃は九ちゃんって呼ばれていたよ。そのせいかわかんないけど、ずっときゅうりが苦手なんだよね。臭いし、味も嫌い。きゅうりなんて、この世から無くなって欲しいって、七夕の短冊にまで書いたほどなんだよね。ま、どうでもいいことだけどさ」
(ホント、どうでもいいことだな……)
「そ、それで? どこの部署なの?」
山月は、宙に舞う九のフケを手で払いながら訊いた。
「警視総監直属の特務警官さ」
「特務警官?」
「そう。簡単に言えば、警視総監の意のままに、手足となって動く部下。いわば、総監の犬だよ」
「い、犬って……」(意外に、自虐的だな……九……)
「さぁ、名乗ったからいいだろ? 早く、ダーツしようぜ」
山月をダーツに誘った九は、笑顔に愛嬌が溢れていた。
先攻の山月は、二本目までで、中心のブルに一本、僅かにブルを外した13点のゾーンに一本。
口を噤んで放った第三投は、ブルに刺さった矢に擦れながら、中心円の中に刺さった。
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