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「よしっ!」
いきなりの高得点をたたき出した山月がドヤ顔で戻ると、九の目は三日月のように湾曲していた。
「ふふふ……」
九が驚いているのか、喜んでいるのか、山月には読めない。
「やるじゃん」
九がマイダーツを手に取り、立ち上がる。
「勝てるかな……」
スローイングラインに立ち、俯いて目を閉じた。念仏を唱えているのか、口先だけがブツブツと動いている。
山月は、口元の動きから、言葉を読み取ってみたが、意味不明で文章になっていない。
(なにかの呪文か?)
「九! 負けるなよ。負けたら減給だからな」
突然の声に山月が振り返る。いつの間にか、店内に入ってきた客が立っていた。濃紺のジャケットを腕に掛けた面長の中年が、水商売風の若い女を二人従えて、薄ら笑いを浮かべている。
「あ、け、警視総監……、お疲れ様です」
山月は、立ちあがって、席を譲るように、後退る。
警視総監の相田は、山月のあいさつに軽く手を挙げて返すと、若い女らをカウンター席に座らせた。
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