1.総監の犬

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 九が、スローイング姿勢に入った時、山月は息を飲んだ。九は、矢を三本とも、右手に握っている。  素早く腕を曲げたかと思うと、九は、第一投をブルのど真ん中に刺し、立て続けに、第二、第三投を放った。 「九! バカか、お前は。お前の負けだ。ハハハ」  相田が笑い、水商売風の女らは、目を丸くしている。 「いやいや、コレ、オレの方が点数、高くないっすか?」 「高くねえよ。ボードに矢が刺さったのは一本だけだろ? 五十点だ。九、お前の負けだよ。今月、給料カットな」 「そ、そんなぁ……」  山月がボードを見ると、真ん中に刺さった矢のお尻に、矢が刺さり、その矢のお尻に三本目の矢が刺さっている。  ブルの真ん中から、稲穂が垂れるかのように三本の矢が垂れ、揺れていた。
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