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九が、スローイング姿勢に入った時、山月は息を飲んだ。九は、矢を三本とも、右手に握っている。
素早く腕を曲げたかと思うと、九は、第一投をブルのど真ん中に刺し、立て続けに、第二、第三投を放った。
「九! バカか、お前は。お前の負けだ。ハハハ」
相田が笑い、水商売風の女らは、目を丸くしている。
「いやいや、コレ、オレの方が点数、高くないっすか?」
「高くねえよ。ボードに矢が刺さったのは一本だけだろ? 五十点だ。九、お前の負けだよ。今月、給料カットな」
「そ、そんなぁ……」
山月がボードを見ると、真ん中に刺さった矢のお尻に、矢が刺さり、その矢のお尻に三本目の矢が刺さっている。
ブルの真ん中から、稲穂が垂れるかのように三本の矢が垂れ、揺れていた。
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