1.総監の犬

9/13
前へ
/128ページ
次へ
「この女の子らのことは、気にしなくていい。ちょっと、そこで助け出してきたんだ」  相田が連れてきた若い女らは、二人だけでしゃべっていて、こちらには興味が無さそうだった。 「で、今日の用件は何スカ? この山月くんも、特務職に入るんすか?」 「察しがいいじゃないか、九。その通りだよ。今日は、顔合わせだ」  山月は、緊張して声が出なかったが、いきなり告げられた辞令に驚き、ジントニックをがぶ飲みする。 「九、一人じゃ、心細かっただろ? 私が、これはと思うヤツをチョイスしたんだ」  相田は、「よろしく頼むぞ、山月」と言って、ポンポンと山月の肩を叩いた。 「別に、星谷(ほしたに)さんが戻ってくるなら、それで良かったんですけどね……わざわざ新しい人、任命しなくても」 「なんだ、九? さっき、ダーツで負けたことを根に持ってるのか?」 「負けたことは気にしてないっすよ。ただ、給料が下がるのは、勘弁してほしいっす」 「なんだ、そっちのことを気にしてるのか」  山月の視界の隅で、入り口のガラス戸が開いた。 「おいおい、やっと、見つけたぞ、お前ら。何てことしてくれたんだ、コラ」  チンピラ風の男たちが、敵意むき出しの視線を向けてきていた。
/128ページ

最初のコメントを投稿しよう!

50人が本棚に入れています
本棚に追加