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それなのに、藤堂君がわたしのほうを見て手を止めたすきに、いたずらっ子の妖が筆を彼の鼻の穴につっこんだものだから、たまらずにまた笑ってしまった。
「あははっ、何やってんの」
「やっぱり見えてるだろ」
じっとりした目でにらまれてあわてて目をそらす。
「何のことかなあ、わからないなあ」
冷や汗をかきながら棒読みで言うわたしの鼻先に、ぬっと手がのびてくる。
驚いたことに、なんとその手のひらにはいたずらっ子の妖が乗っているではないか。
「ちょっ、やめてよぉ」
筆の先がわたしの鼻に触れるくすぐったさに体をよじりながら、藤堂君の手を押しのけた。
「そこ、イチャつくのやめてね」
委員長に決まった3年の先輩に教卓からあきれた声で注意されてしまい、すみませんと小さく頭を下げる。
「じゃあ、まだ係が決まっていないそこの二人は、3階と4階のトイレ係ってことでいい?」
筆を持ったいたずらっ子のせいで係決めの話を全く聞いていなかったわたしたちは、委員長のその提案にうなずくしかなかったのだった。
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