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「んんっ……」
目を覚ました優月は、スマホの画面を確認する。あれからずっと眠り続けていたようで、もう次の日の朝になっていた。隣では、羽咲が丸くなって眠っている。
「ありがとう、羽咲ちゃん」
羽咲を起こさないように静かに起き上がったつもりだったが、気配に気付いたのか、羽咲も目を覚ました。
「優月くん」
「羽咲ちゃん、おはよう」
「もう大丈夫ですか?」
「うん、もうすっかり元気だよ。羽咲ちゃんが側にいてくれたからだね」
「本当に?」
どこか不安そうな羽咲の頭を優しく撫でる。
「本当だよ。心配かけちゃったね。それと、昨日は何もしてあげられなくてごめんね。さてと、今日は何して遊ぼうか。何かしたいことある?」
「なんでもいいです」
「うーん、じゃあ夕方までどこか出かける?」
「外、ですか……?」
恐る恐る羽咲が尋ねる。
「そういえば、暑いの苦手なんだっけ」
「はい……」
「わかった。じゃあ家の中で遊ぼう」
結局この日は家で映画を見たり、ゲームをしたりして過ごした。羽咲にとってはその全てが新鮮で、優月との時間を1秒も無駄にしないように、全力で楽しんでいた。
「あ、ごめん。そろそろ出掛ける時間だ。羽咲ちゃんも来る? 外、少しは涼しくなってきたみたいだけど……」
羽咲は首を横に振った。
「そっか。じゃあ行ってくるね。21時までには帰るけど、何かあったら流人の携帯に連絡して」
そう言って優月は自分のスマホを羽咲に預けた。
「行ってらっしゃい。気をつけてね、優月くん」
羽咲に見送られて、優月は神社へ向かった。
流人の誘いで祭りを手伝うようになってから15年目の今年は、いつもより出店の数も多く、特に賑わっているように感じた。境内の見回りや、流人の父親がやっている屋台の手伝いをしている間も、優月の頭の中は羽咲のことでいっぱいだった。
午後8時20分、手伝いを終えた優月は、屋台で余っていた氷で特別に作ってもらったかき氷を持って、急いで家に帰った。羽咲にそれをお土産として渡すと、羽咲はとても嬉しそうにかき氷を頬張った。今日の祭りについての優月の話を、羽咲は目を輝かせて聞いていた。そして2人は眠りに就いた。
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