夏の夜は暑くて寒い

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ぷりんは続けた。 「あのね? ママ今日はお仕事なの。でね、あたし一人でここで待ってろって言われたの」 一体どういう話なのだろうか。青年にはぷりんの母親の考えが理解出来ないのであった。 思わずに尋ねてしまう。 「え? 何? どういうこと?」 「えっとね、ママね、夜中まで男の人とおさけ飲むお仕事してるの」 お察しの家庭状況か。どうなっているんだ…… 青年は絶句しそうになるも、言葉を無理矢理喉の奥より引きずりだす。 「お酒? 夜中までやってるお店なの?」 「そうだよ。いつもは夜の十二時までに帰ってくるんだけど、今日はおデートがあるから朝まで帰れないんだって」 宿泊を伴うアフターか。娘を一人置いて母親は男と酒飲んで懇ろとは…… 呆れたものである。しかし、こうしてお金を稼がないと、この母娘は生きていくことが出来ないのならば一概に否定は出来ない。 青年はぷりんの名前を聞いた時よりも複雑な気持ちに襲われるのであった。 そして、好奇心から尋ねてしまった。 「お父さんは?」 ぷりんは首を横に振った。お察しの家庭か…… 分かっていた(てい)ではあった。 「知らない。あたしが生まれてすぐ、よそに女の人作って出ていったの。そのまま離婚しちゃったー」 シングルマザーというやつか。青年はこれ以上、他所様の事情に踏み込んではならないと考えた。話を打ち切りにすることにした。 おそらくだが、店員がしつこいと言うのは「一人」で座っているところを質問攻めに遭いたくないと言う意味だろう。この状況では席でウツラウツラと船を漕いでいるだけで直様に店員が起こしに来るだろう。ファミリーレストランは寝る場所ではなく食事の場所だ。 この状況になれば、行き先は間違いなく警察での保護だ。 そうなれば、ぷりんの母親は烈火のように怒るだろう。この子はこうして怒られたことがあるに違いない。過去、ぷりんがこうして怒られた経験がありトラウマになっていることは先程の発言からして明白だった。 店員も一人放置された少女を警察に連れて行くことは間違っていない、間違っているのは母親である。
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