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「で、いつ迎えにくるの? スマホとかある? ないなら連絡したげるよ?」
ぷりんは首を横に振った。
「持ってない。ママのスマホの番号しらない、おさけ飲む男の人とどこに行くかも分からない。お店の番号もしらない」
「全く、どうなってやがるんだ」
「ママ来るまで一緒にいて」
すると、ぷりんの腹が再びぐーと鳴った。
「おい、メシは食べたのか?」
「うん…… ポテトフライにドリンクバー」
ポテトフライとドリンクバーの組み合わせは、このファミリーレストランで一番安いメニューの組み合わせである。額面はワンコインでお釣りが来る程度だ。
つまり、ぷりんはワンコインで一晩ファミリーレストランに預けられたと言うことになる。青年は「世も末だ……」と、思いながら財布の中身を眺めた。
財布の中には相変わらずの寒波が吹き荒れていた。
「明日(実は今日である)、銀行行けばいいか……」
「どうしたの?」と、ぷりんが青年に尋ねた。
「好きなもの、頼んでいいぞ? そうだな、ハンバーグランチセットでいいか?」
「……ううん」
ぷりんの視線は席の隅に立てられたメニュースタンドに向けられていた。
そこには夏季限定メニューの苺プリンパフェのメニューが置かれていた。青年もスイーツは嫌いではないために興味本位で頼みたいとは思っていたが、野郎一人でパフェを注文するのは恥ずかしいとして二の足を踏んでいたものである。いい値段をしており、このファミリーレストランの中でも一・二を争うほどに高いものである。
「ん? 苺プリンパフェ食べたいのか?」
「……」
返事はない。しかし、ぷりんの目線はメニューに向いているところ、食べたいと目で訴えかけているのは明白であった。
青年は呼び出しボタンを押した。
青年の席に店員が来訪した。青年はこんな真夜中にこんな小さな少女がいることを気にしろよと思いながら注文を行った。苺プリンパフェ単品を俺みたいな野郎が頼むのは恥ずかしいと考えた青年は、カモフラージュのために自分の腹ごなしの料理を頼むことにした。
「ご注文を伺います。只今の時間は深夜料金となっておりますので、ご了承の方をお願います」
「はいはい、えっとね…… ハンバーグランチセット…… セットはライスで」
「ハンバーグランチセットをお一つ、ライスで。以上でよろしかったですか」
青年は一旦口を閉じた。そして、明日から暫くの間フリカケと塩粥の貧乏食生活になることを覚悟した。
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