ビー玉の蛍、実に良く在る星空

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「いや、だから、本当だって」  あの夜が明けた翌日、僕はいつも通り、校庭で仲間と他愛もない会話に興じた。外はすっかり暑く、だからこの校庭にそびえ立つ大きな木が作り出す陰はとても涼しく、まさにオアシスだった。 「いやお前、そんな話信じられるかよ」 「この街に星が見える大きな丘があって」 「そこで美しい女の子に出会って」 「一目惚れしただなんて」  コテツとソラは交互に言い合ったあと、嘲るように僕を見た。馬鹿にされたような、いや、まさに馬鹿にされている最中で、僕は体の芯から熱くなった。これは、夏のせいではない。 「だってさ、本当なんだよ」僕は少し、ムキになる。 「じゃあさ、どこにそんな丘なんてあるんだよ、俺たちも連れて行けよ」 「それは、その」 「ほら、そんな場所、最初からないんじゃないか」  言い淀んでしまった自分にひどく後悔しながらも、僕は追い討ちをかけてくるコテツを睨んだ。が、コテツはどこ吹く風で、まるで気にも留めていない。 「寝ぼけてたんじゃねえの」 「いや、そんなまさか」 「そもそもどうやってそこまで辿りついたの」  ソラが言った。不意打ちを食らったような気分になり、僕はごにょごにょとした声になる。 「その、蛍を追いかけていて」  そこで、コテツとソラの間でまたも僕を嘲るような笑いが湧いた。 「お前、蛍はないだろ」 「この街にそんなのがいるの?」 「俺は見たことがない」 「僕も」  かあっと体が熱くなる。丘だってあったし、蛍だっていた。それに彼女も。全て本当なのに、けれどそれを証明する術がないことがすごくもどかしい。 「そんなに言うなら、手伝ってよ」  口をついて出た言葉だった。コテツとソラはきょとんと首を少し傾げていた。姿の似た兄弟の彼らがそれをすると、少し混乱してしまう。 「手伝うって?」ソラが首の角度はそのまま言った。 「それは、あの女の子との再会を」 「なんだそりゃ」コテツが吹き出すように笑う。「一生見つからないんじゃねえの」  そんなことない。僕は声を大にして言いたかったが、辞めた。彼らは僕が何を言っても、嘲り笑うだろう。なら、事実を叩きつけるほかない。あの子を見つけ出す。僕は胸に誓った。
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