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結局、暖色だった夕暮れのコントラストがすっかり暗くなった頃に、僕たちは解散した。コテツとソラが最後まで僕を慰めたが、僕は途中から聞こえないフリをした。
家に帰ると、母が優しく僕を迎えてくれた。お腹すいたでしょ、ご飯はもう少し待ってね。そう言い僕の頭を優しく撫でる母に返事をしながらも、僕は少し罪悪感を覚えた。こんなに愛情を注いでくれる母の知らない夜中に、僕は外の街へと繰り出している。
誰も知らない、父も母も兄も寝静まった頃に僕はそうっと家を抜け出して、そして昨日あの子に出会った。きっと、今日も外へあの子を探しに行くだろう。だから、少し胸が痛くなり、僕は逃げるようにリビングへ向かった。
やがて拓海兄さんが帰ってきて、そのあと父が帰ってきたところで、夕食の準備が始まった。父は小麦色の液体を飲みながら、少し顔を赤くしていた。あれは、ビールというものだと、この前拓海兄さんに教えてもらった。ビールを飲んだ父は上機嫌になるが、反面独特の臭いがして、正直なところ僕は苦手だった。
夕食もひと段落して、母が食器を片付けている。拓海兄さんは早々に部屋に引き上げて行き、父はまだビールを飲みながらテレビを見ていた。
特にやることの無かった僕は、ソファに座りながら同じくテレビをぼうっと眺めていた。テレビの内容は難しくてよくわからなかったが、何やら暗い室内がずっと映し出されていた。何か、怖い映画でも見ているのだろうか。
そう思っていると、突然テレビから眩いほどの明かりがぴかっと放たれだして、僕は目を丸くした。何かが爆発した時のように、溜め込んだものが一気に解き放たれるようの光だ。遅れて、テレビの中に満点の星空の映像が映し出されていることに気がついた。
テレビの中の映像は、左右上下へゆっくりと動きながら、その星空の全体をこちらへ見せた。星のアップが映し出されたかと思うと、だんだん遠のいて全体を映す。建物の中なのに、星が天井に張り付いているのを見て、僕は不思議に思った。そして、気がついたらテレビの前に来ていた。
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