ビー玉の蛍、実に良く在る星空

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 『それ』の正体は、結論から言うと僕の瞳だった。博物館の外に設置されたオブジェーーー鏡のように磨かれた銀色のオブジェーーーへ、月の光が反射した僕の瞳が映写されてしまった。その結果、オブジェの表面へ、宙に浮く光る物体が完成してしまったのだった。都合よく、夜の暗さに紛れて僕の体含め他のものはまったくオブジェに映らなかった。視線の先にその物体を作り上げてしまった僕は、それが自分のせいだとも知らず、無邪気に蛍だと勘違いして追いかけてた。博物館の周りには申し訳程度の木々が植えられており、周りがよく見えていなかった僕は、やはりそこを森だと勘違いしてしまったのだった。  博物館は厳重にロックされていたものの、何とか隙間を見つけて中に入り込めた。博物館の中は、足元が見えやすいように少しだけ灯りがついていて、思ったよりも暗くなかった。僕は昨日の記憶のとおり、長い廊下を真っ直ぐ歩いた。途中、廊下に面した扉の先に見える展示品に心を奪われそうになったが、何とか耐えて歩く。すると、一番奥にひときわ大きな扉が見えた。あった、これだ。僕は駆け出して、昨日と同様、開け放されたままのその大きな扉をくぐった。  すると、頭上に広がる一面の星空。僕はまたしても、その美しさに心を奪われてしまったのだった。その場所ーーーつまり、博物館のメインホールに設置されたプラネタリウムに、僕は昨日と同様、足を踏み入れた。この街で星が見れる場所といえば、期間限定でプラネタリウムを映写している、この場所しかないことに、テレビ番組で気がつき、昨日僕が訪れた『丘』がこの場所であることが、たった今証明された。この部屋は自然を模した展示になっているのだろうか、部屋に設置された展示品も森を意識させるようなものが多かった。そして、ホールの中央に行くごとに小高くなっている床も、田舎の丘を感じさせた。  そして、僕は高鳴る鼓動を抑え、その中央の丘を見つめた。ーーーいた、昨日の彼女だった。
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