鷹谷さんのお家

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「へぇ、清一さんが。ってことはもしかしてあそこ、彼のいうところのホラースポットだったの?」 「確かそうだったんじゃないかしら。ちよっと待って」 米子はそう言って隣の席に置いた鞄をガサゴソと探って、黒革の手帳を取り出した。これは彼女の、『メモ手帳』だ。米子は清一と現地に赴いた時や情報収集をする時に、必ずメモを取る係をさせられているのだという。まさにアシスタント、雑用係だ。とはいえ、学生時代から米子は几帳面なところがあって、何かを綺麗にリストアップしてまとめたりするのは得意だったので、彼女も好きでやっている部分はあるのだろう。 「あ、書いてあったわ。やっぱり、ちょうど今から二年前に行ってたみたいね」 米子は分厚い手帳のページをめくって、該当する部分を指し示した。米子はそれを数秒の間じっくりと見つめたあと、 「ああ、思い出した。確かこの家って、『鷹谷(たかや)』って表札が出てるところよね」 そう言いながら手をパチンと鳴らした。 「そうそう」 「あそこはね、元々この時点だと五年前、つまり今から七年前ね。そのぐらいの頃から、ずうっと空き家のままなのよ」 「ええっ、そうなの」 「七年前まで、あそこには鷹谷さんという人が住んでいた。三人家族で、両親が奮発してあの豪華な家を買って幸せに暮らしてたそうなのよ。でも、ある時、忽然と彼らの小学生の一人息子が姿を消したそうなのよ」 「姿を消した…」 「そう、息子に留守番をさせていたら、家からいなくなってたんだそうよ。誘拐をほのめかすような電話もなかったから、警察は当然家出を疑ったわけだけど、結局何も手がかりは見つからないまま、捜査は打ち切りになってしまった。それで、両親はその家を手放してどこかに引っ越してしまったの」 「ひえー、こわっ」 由美は体をぶるぶると震わせた。 「それから、ずっとあのまま空き家になっているらしいわ」 「へぇ…」 「っていうのがまず最初に清一さんが拾ってきた話なの。でも、現地に行って色々情報を聞いて回ってるとね、子供が消えたって話は、どうやらその鷹谷さんのお子さんだけじゃないらしいのよ」
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