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「なんだよそれ、マジなのか?」
二十三時を回り、直人は既に自室で眠った頃。リビングで由美が例の家の話をすると、俊作は缶ビールを手にしながら、驚いた顔をした。
「うん。米子が言ってたの」
「確かに、あの家は立派だけど、なんというか、不気味な感じもしたもんなぁ…」
俊作は唸るような声を出す。そしてしばらく黙り込んだあと、あっ、と何かを思いついたかのように表情を一瞬変えた。
「どうかした?」
「いや、何でもない」
俊作は首を横に振った。
「その話だと、みんな留守番中に子供がいなくなったってことなのか?」
「そうね。米子のメモ帳にはそう書いてあった」
「なるほど…留守番中にいなくなる、ねぇ…」
俊作は再び考え込むように腕を組んだ。
「まっ、そんな家は俺たちには関係ないし、どうでもいいことだな」
とだけ言って、それきりあの家の話はしなかった。
それからしばらく経った後、由美と俊作が他愛もない話をしていると、階段をドスンドスンと降りてくるような音が聞こえた。その音を聞いた二人は会話を止め、はあ、と同時にため息を吐いたのだった。
「ねえ、チャーハンが食べたい」
ガラガラとリビングのドアを開けるなり、直人は言い放った。
「ごめんね直人、チャーハンは今ないのよ。カレーならあるから、それでもいい?」
由美が訊ねたが、直人は首を横に振った。
「チャーハン。チャーハンが食べたいの!」
直人は手をぶんぶんと振るいながら、何度もチャーハン、チャーハン、と訴え続ける。由美が今はないから明日にして、カレーやラーメンで我慢して、といくら説得しても聞く耳を持たず、最終的には地面に寝そべって手足をぶんぶんと振り回しながら、大きな声で叫び始めた。流石にこのまま放置しているのも近所迷惑なので、由美は車に乗って近くのコンビニでインスタントのチャーハンを買ってきて、それを食べさせた。すると直人は満足したのか、自分の部屋へと戻っていった。
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