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「さ、また2週間後までに作らなあかん」
何だか、その言葉が、ばあちゃんが、疲れてるように見えて心配になった。
「ばあちゃん、いっつも作るのしんどないん?」
「咲ちゃん、心配してくれるん?」
ばあちゃんが、私の頭をそっと撫でた。
足元で美雪が、私達の話を不思議そうに聞いている。
「大丈夫や!ばあちゃん、咲ちゃんらの花嫁姿を見るまでは、頑張るで!」
ばあちゃんは、安心させるように、銀歯が光る口を、大きく開けて笑った。
ばあちゃんには、じいちゃんが居ない。咲香も美雪も会ったことがない。咲香達が生まれる、ずっと前に病気で死んじゃったと、ばあちゃんが以前、俯きがちに話してくれた。
ばあちゃんは、少ない年金と、浴衣を作る作業代で生計を立てていた。
「何でも、手に職やで。咲ちゃんも、みゆちゃんも、何でもいいから、一つ得意なこと見つけるんやで。それは自信になるし、助けになるさかいにな」
そういって、頭をくしゃっと撫でてくれる、ばあちゃんの、あったかい、ぽってりとした掌も私は、大好きだった。
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