浴衣リメイク

1/2
前へ
/11ページ
次へ

浴衣リメイク

家に帰ると、美雪が、すぐにパソコンを開いた。 「咲ちゃん、これ見てや」 そこには、着物のデザインの写真と、着物柄のスカートやワンピースが写っている。 「これな、最近流行りの和柄の洋服ブランドのやねんけどな、少しだけ携わらせてもらってん」 「え?美雪、洋服作れんの?」 「違うよ、デザイナーの人とな、デザインを、元に、和柄の柄がより綺麗に見えるように、柄の位置とか、魅せ方を考えたりしててん」  「すごいやん」 思わず、目を丸くした私を見ながら、美雪が目を細めた。 「そこじゃなくてな、このブランド立ち上げたデザイナーさんが言うには、元は着物を(ほど)いてスカート作ったのが、始まりやねんて。着物リメイクって言うねん。でもさ、着物解けるんやったら、浴衣だって(ほど)けるんと違う?浴衣リメイクもあるってゆうてたし……」 「え?ちょっと、待って、それって……」 美雪が、パチンと指を鳴らした。 「そう!ばあちゃんの絞りの浴衣を(ほど)いて、シャツとズボンに作り替えるねん!咲ちゃんと私で!」 あの恥ずかしがり屋で、いつも私の後ろに隠れていた美雪が、とても頼もしく見えた。  「咲ちゃん、ミシン使えたよね?」 「うん、ばあちゃんが、元気な時に教えてもらった!座布団袋しか作った事ないけど」 「座布団も洋服も一緒や!」 私達は、顔を見合わせて、拳と拳を合わせてグータッチした。 それから、私達は、仕事が終われば、ばあちゃんの見舞いにいき、面会を1時間だけ早く切り上げるようにした。家に戻り、私の部屋でパソコンの検索画面を開いて、美雪と二人で浴衣リメイクについて調べる日が何日か続いた。 まず、手縫いかミシン縫いか。それによって、(ほど)き方も、(ほど)く時間も、生地の量も、変わってくる。 「結婚の時に、じいちゃんが買ってくれた、絞りの浴衣だったよね」  私は頷いた。おそらく、手縫いだ。 手縫いであれば、リッパーで、1時間もあれば、(ほど)そうだ。美雪が、YouTubeで浴衣リメイクの動画を流していく。二人で食い入るように眺めた。 「美雪、そのデザイナーの人に、型紙とか借りれる?あとLサイズのズボンの寸法も知りたいねんけど?」 「咲ちゃん、任せて。咲ちゃんがスムーズに縫えるように型紙貸して貰って、サイズも聞いとく」 美雪が唇を、持ち上げた。 「じゃあ、明日土曜日だし、まずは浴衣解こうか」  「うん、急がなきゃね、咲ちゃん、がんばろ」 そう、急がなきゃいけない。 私は、ばあちゃんが、またあの絞りの浴衣を着れるかと思うと、胸が高鳴る程に興奮していた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加