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Drones
笑いたければ笑え。
反社といえども行方不明になれば警察に捜索願を提出する。
「事件性の高い『特異行方不明者』扱いですから警察もすぐ動くでしょう、うちの若様ですし」
と、わたしの護衛についてくれている事務所の田辺くん。モーニングセットを食べ終えると、今度は早い昼メシです、と言ってナポリタンを注文する。ガタイがいいからだろう。
わたしはモーニングセットを食べ終え、メロンソーダを追加オーダーする。若様こと──八神旬からもらったゲーミングノートPCを起動し、喫茶店のフリーWi-Fiに接続する。
ウクライナIT軍とアップリンク完了。
ゲームのような画面が表示される。わたしは辞書に登録した挨拶をテキストチャット欄に入力する。
「Добрий вечір!」
向こうは午前三時半ぐらい。挨拶がかえってくる。戦争はセベロドネツク攻防戦が続いていた。今日もその周辺での露軍襲撃になるだろう。
「それにしても姐さんは凄いですね、見学よろしいですか」
ええ。
全身黒づくめ。それはわたしも同じだけれど、わたしはメタモルフォーゼのゴス服だから。
「凄くないわ、パソコンゲームよりもかんたんなんだから」
この声。画面はすでに飛び立ったウクライナ軍のドローンが捉えるカメラの映像だった。どこへ移動かの指示が画面に表示される、わたしはキーボードを叩きドローンを操縦する。この、キーボードを叩く指、というか手。
違和感しかない。
デジカメやスマホの顔認識機能のように、ドローンの映像に四角の記号が現れた、露軍の車両だ。
「敵ですか?」
わたしはうなずいた。できるかぎり声を出したくない。
IT軍から認識した車両の詳細なデータが表示される。
──敵の電子戦車両。第一目標とするので上空で破壊の確認を求む。
広大な地球のどこかで、対戦車ミサイル、ジャベリンが発射される。
わたしは上空でドローンをホバリングさせる。
爆発。
ターゲット完全破壊、わたしはその映像をIT軍に送る。
次の移動先が指示され、そこへ──。
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