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泡沫の夢
隅田川花火大会。
百万人近くの人出がある花火大会で例年七月の最終土曜日に開催される。
あふれんばかりの人の中、私たち三人ははぐれないように歩いていた。
浴衣を着た私たちは周囲の花火大会独特の雰囲気の中に溶け込む。
めまいがしそうな蒸し暑さの中、私は一人自分の世界に浸る。
きっとこれは最後に見る泡沫の夢。
その夢が覚めなければいいのに。
どうかお願い。
この夢が覚めないで。
私は今もどうしようもない悪あがきをしている。
それぐらいわかってる。
だけどお願い最後に夢を見させて。
私の目の前で私の幼馴染たちが不意に向き合う。
「遥。好きだ。俺と付き合ってほしい」
「うん、いいよ。雄太君」
瞬間、夜空に大輪の花が咲く。
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