1人が本棚に入れています
本棚に追加
一年前のある夏の日。
おしとやかな性格の遥と優しい雄太君と私たち幼馴染三人はいつも高校からの帰り道を共にしていたけれど、その日は雄太君と私の二人だけだった。
三人で帰るときはいつも賑やかだったのに二人きりの今日、私たちは無言だった。
無言の言葉であやとりする。
その時間はもどかしくて、でもいとおしくてこのままずっと二人でいられたらいいのにって思える。
何か話しかけたいけど何を話したらいいのかわからない。
三人のときは普通に話せるのに、どうして二人きりだとこんなにも話せないんだろう。
話しかけたいけど、話せない。
もどかしくてたまらない。
雄太君のこともっと、知りたいのに。
そのとき、不意に雄太君が私に話しかける。
「今日……二人きりだね」
私は少し恥ずかしくなりながらいつもよりも小さな声で答える。
「そ、そうだね」
突然二人きりだねなんて言われてドキッとした。
雄太君は恥ずかしそうに言葉を重ねる。
「ねぇ、芽衣。なんていうかさ、このまま二人きりでもいいなってそう思えるんだ。芽衣はどう思う……かな?」
瞬間、世界が鮮やかに色づく。
最初のコメントを投稿しよう!