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そんなやり取りから始まった二人の交流は、意外にも長く続いた。何百年も前に綴られた藤原定家の”明月記”は平安オタクである白梅の心だけでなく、宇宙オタクの明星の心をもがっちりと掴んでいた。
明月記の中には、超新星爆発の他に日本で観測された「オーロラ」に関する記述もある。そこに記されているオーロラは「赤色」であり、なぜ青や緑では無かったのかと白梅が明星に問いかけると、明星はホワイトボードを使いながら事細かにその仕組みについて説明した。
(といっても、白梅の理解度は半分程度であったが)
対する明星も次第に定家が残した作品に興味を示し始め、何気なく歌の意味について白梅に問いかけることが増えた。
すると白梅は水を得た魚の如く、その歌が作られた時代背景から送り相手との関係性までを熱弁した。
(といっても、明星の理解度は半分程度であったが)
好きな分野について遠慮することなく話せる間柄というのは、お互いにとって心地よい関係だった。次第にどちらから言い出すでもなく互いの部室に入り浸ったりと同じ空間で過ごす時間が増え、向日葵が咲き始めるころには二人はすっかり意気投合していた。
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