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「明星君のおかげで今回は理数科目も自信があるわ」
「僕も、白梅さんが教えてくれた古文の問題解けたよ」
夏休み直前のテストを乗り越え、二人はいつも通り天文部の部室で話し込んでいた。
エアコンがついていない部室の空気はいつもどこか淀んでいる。白梅は小さな窓を全開にして風が通るのを待っていると、明星は手元のパンフレットを捲りながらぽつりと零した。
「文芸部は合宿とかあるの?」
「んー……特に無いわね。文化部って、あまり合宿のイメージが無いし」
「そっか。じゃあさ、良かったらここで合同合宿しない?」
す、と差し出されたパンフレットには、古民家をリノベーションしたというレンタルスペースが掲載されていた。
「ここ親戚がやってるんだけどさ、正式なオープンはまだ先だから試しに泊っていいって言われてて。山の方にあるから天体観測しに行こうかなーて思ってるんだけど、文芸部的にはどう? ほら”夏は夜”、て言うじゃん」
理系一辺倒だった明星の口から告げられた意外な引用に、白梅は僅かに目を見開いた。そしてパンフレットに記載された縁側の写真を眺め、その厳かな和の雰囲気に自然と心が惹かれた。
明星は真っすぐに白梅の顔を見ながら返答を待っている。その視線に気恥しさを覚えつつ、白梅は少し赤くなった顔を逸らしてぶっきらぼうに告げた。
「……他の部員にも、声をかけてみるわ」
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