思い出

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

思い出

 中学生の頃、友達何人か集まり怖い話をするのが流行った。どれだけ驚かせる事ができるか... そういうことが楽しい頃だった。  私は話を聞くのは好きだったが、自分が話すのは苦手だった。どうしても途中で顔がにやけてしまうのだ。だから友達にはバレバレだった。  みんなが好んで話していた内容は、次のような話だった。  大学生5人が、夏休みに海に遊びに行った。夕方になり、そろそろ帰ろういう時になって1人だけいない事に気づいた。みんな必死に探したが見つからない。その時代は今のようにまだ、携帯電話がなかった頃だったから、その場で所在を確認することは出来なかった。結局、先に帰ったのだろうということになり、その時はみんなが納得して帰ることになった。  先に帰ったと思われる大学生は、結局家にも帰っておらず、その後も行方がわからないまま数日が経ったある日、仲間の一人がみんなを集めて一枚の写真を見せた。そこに写っていたのは、行方不明になった友達を海に引きづりこもうとする無数の手だった。  今考えれば、よくある話かもしれないが、当時中学生だった私たちには、とても怖い話だった。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!