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以来会うこともなく、ましてや連絡をとることすらなく過ごしてきて、ついに三年が経つ。
もしかしたら当時の俺に同情して、その場しのぎであんなことを言っただけなんじゃないか。
いい加減忘れるべき…そう思い悩む自分。
それでも信じたい、…もう一度会いたいと待ち望む自分で揺れていた。
「………は」
短くため息をつくと、胸のあたりがチクッと痛んだ気がした。
この空虚感はいつ埋められるんだろう。
『孤独に襲われたら、私が一人じゃないよって充永くんに教えてあげる』
付き合う前にそう言ってくれたよな。
俺に教えてくれよ…一人じゃないよって。
「……壬冠」
何度呼んでも応えてくれない。
そんなのわかってる。いくら想ったって…叶わないものもあるんだ。
失いかけたんじゃなくて、失ったんだろ。
きっと今頃高校を卒業して、進路も決まっていて…進学しているか、もしくは就職か。
たくさん友達もできていて。もしかしたら彼氏なんかもできていて……。
きっと笑って過ごしているだろう。
「……バカみてぇ」
何度同じことを考えて、嫌悪感に苛まれたら気が済むんだろう。
だけど───
もし、あの時にもう一度戻れるなら。壬冠に会うことができたなら…。
「─────」
この手でちゃんと渡して、伝えたかった…俺と…。
「───充永くん」
その瞬間、聞き覚えのある懐かしい声が俺の名前を呼んだ………
なんて。
あり得ない。
ついに幻聴まで聞こえてくるようになっちまった、ってことだ。
さっきよりも深いため息をついて、肩を落とす。
執念深く瞑想しすぎ…ってな。
ただ伸びているだけの左足の先を見つめて、自己嫌悪に陥った。
「(…あれ?そういえば)」
自分の世界に入り込んでてすっかり忘れていたけど…なかなか戻ってこない友人の存在をふと思い出す。
俺の親友であり、良き理解者の最上 要介。なんだかんだいつも近くにいて気にかけてくれる親切な奴。
で、……いくらなんでもトイレ長すぎ。
暇潰しとはいえ何で急に公園なんか…。今日はよくわからないことばっか言ってたし。いや、それはいつもか。
それでもやっぱり気になって背後を振り返った。
「………!」
だけど、振り返った先に立っていたのは友人ではなかった。
「……壬……冠」
あまりに執念深すぎて見えている幻覚?
そうだ、そうに決まってる。
ってことは突然いなくなったりとかするんじゃあ…。
「良かった!覚えててくれたぁ」
「(………?喋った!!!!!)」
心地の良い少し掠れた声色に愛しさがこみあげてくる。
喉が詰まったみたいに言葉がでてこない。
記憶の中ではまだ子供っぽいままだったけど、そこにいる存在は驚くほど大人びていた。
でも、嬉しそうに照れ笑う姿は三年前と全く変わっていない。
少しずつこちらに近づいてくる壬冠を見て妙な恐怖に襲われる。
今見えているのは本当に現実か?
「なんで…?」
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