1.夢か幻か、現実…か?

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以来会うこともなく、ましてや連絡をとることすらなく過ごしてきて、ついに三年が経つ。 もしかしたら当時の俺に同情して、その場しのぎであんなことを言っただけなんじゃないか。 いい加減忘れるべき…そう思い悩む自分。 それでも信じたい、…もう一度会いたいと待ち望む自分で揺れていた。 「………は」 短くため息をつくと、胸のあたりがチクッと痛んだ気がした。 この空虚感はいつ埋められるんだろう。 『孤独に襲われたら、私が一人じゃないよって充永くんに教えてあげる』 付き合う前にそう言ってくれたよな。 俺に教えてくれよ…一人じゃないよって。 「……壬冠」 何度呼んでも応えてくれない。 そんなのわかってる。いくら想ったって…叶わないものもあるんだ。 失いかけたんじゃなくて、失ったんだろ。 きっと今頃高校を卒業して、進路も決まっていて…進学しているか、もしくは就職か。 たくさん友達もできていて。もしかしたら彼氏なんかもできていて……。 きっと笑って過ごしているだろう。 「……バカみてぇ」 何度同じことを考えて、嫌悪感に苛まれたら気が済むんだろう。 だけど─── もし、あの時にもう一度戻れるなら。壬冠に会うことができたなら…。 「─────」  この手でちゃんと渡して、伝えたかった…俺と…。 「───充永くん」 その瞬間、聞き覚えのある懐かしい声が俺の名前を呼んだ……… なんて。 あり得ない。 ついに幻聴まで聞こえてくるようになっちまった、ってことだ。 さっきよりも深いため息をついて、肩を落とす。 執念深く瞑想しすぎ…ってな。 ただ伸びているだけの左足の先を見つめて、自己嫌悪に陥った。 「(…あれ?そういえば)」 自分の世界に入り込んでてすっかり忘れていたけど…なかなか戻ってこない友人の存在をふと思い出す。 俺の親友であり、良き理解者の最上 要介(もがみ ようすけ)。なんだかんだいつも近くにいて気にかけてくれる親切な奴。 で、……いくらなんでもトイレ長すぎ。 暇潰しとはいえ何で急に公園なんか…。今日はよくわからないことばっか言ってたし。いや、それはいつもか。 それでもやっぱり気になって背後を振り返った。 「………!」 だけど、振り返った先に立っていたのは友人ではなかった。 「……壬……冠」 あまりに執念深すぎて見えている幻覚? そうだ、そうに決まってる。 ってことは突然いなくなったりとかするんじゃあ…。 「良かった!覚えててくれたぁ」 「(………?喋った!!!!!)」 心地の良い少し掠れた声色に愛しさがこみあげてくる。 喉が詰まったみたいに言葉がでてこない。 記憶の中ではまだ子供っぽいままだったけど、そこにいる存在は驚くほど大人びていた。 でも、嬉しそうに照れ笑う姿は三年前と全く変わっていない。 少しずつこちらに近づいてくる壬冠を見て妙な恐怖に襲われる。 今見えているのは本当に現実か? 「なんで…?」
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