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 オフ会前日の夜、爽太は緊張と不安で眠れずにいた。おもむろに携帯から充電器を外し、電話をかけた。ほんの気まぐれだった。 「こんな夜にどうしたの」 「もしもし母さん、いや、べつになんでもないんだけど、元気してるかなって」 「……怖いんだけど。母さんは大丈夫よ。なに、なんかあったの」 「よかった。いやいや、なんでもないんだ」爽太はすーっと息を吸った。空気が歯にあたる冷たい感覚は、よりいっそう彼を強ばらせた。「里紗も元気にしてるかな」 「頑張ってるみたいよ。最近忙しいらしくて会えてないけど」 「そうか……」 「あんたから里紗の話をするなんて珍しいね。なんかあったの」 「まあちょっと、いろいろあって」 「あっそ。あんたたち、もういい加減仲直りしなさいよ。この五年間兄妹が揃って帰ってこない親の気持ちも少しは考えなさい。父さんも母さんも力になるから」 「ああ。なんとか模索してみるよ」 「もう遅いから寝るわ。あんたもパソコンばっかりいじってないで早く寝なさい。おやすみ」 「そうするよ。おやすみ」  ベッドの横でモーター音が鳴った。ライザが別端末を経由して自らの意思で起動した合図だ。 「わたしも眠れません。どきどきしています」 「……そうか」 「ソニアはわたしのことを飲食業界の新卒だと思っています。しかし、実際は莫大なデータとプログラムによって構成された概念的非実在集合体です。きっと幻滅されます」 「そんなことないさ。そうだ、体がほしいなら作ればいい。機械システム分野の連中と共同で開発してみよう」 「それは、すごく素敵ですね」ライザの感情が一気に跳ねる。「わたしには性別の概念がないため、中性的な外見を望みます。あと、声や仕草も一方の性への偏りがないようプログラムしてほしいところです」 「さしずめ次は人とロボットの婚約についての法改正をご所望かな」 「名案ですね。愛は水と一緒です。形なんて最初からありませんから」 「どこで覚えたんだか……」 「秘密です。もう寝ましょう。寝坊は許しませんからね」 「目覚ましは任せた。おやすみ」 「……おやすみなさい、教授」
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