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「智樹、どうやって妖精を見分けた」
「妖精ってゆうし飛んえうし」
智樹と環の持つ目は異なる。智樹は幽霊が見えるが環は見えない。だから妖精が見えるかも異なるかもしれないが、わからない。なぜなら環はこれまで妖精に遭遇したことがない。
それに妖精は子供しか見えないとも聞く。智樹は頭の中に子供っぽい部分があるから見えているのかもしれない。
「予め妖精と聞いていれば用意したものを」
「ごめんなしゃい」
「どんな姿だ」
「ろんな?」
「妖精が小さくなったのは最近だ」
「子ろもくらい」
智樹は臍くらいの高さを手で示す。
『妖精は小さいもの』という観念は1901年にコティングリーが写真撮影したと主張して以降に定着したもので、それまでの姿は様々だった。第一、妖精が人間と入れ替れるのならば、姿はそれなりに人間に似ているはずだ。
本当に妖精だとすれば、その性質は必ずしも善なるものではない。智樹が騙されている可能性も高い。そこまで考えて、環は酔っ払った智樹が言うことがそもそも正確なはずがないと思い直し、それがなんだか当たりを付け、小さくため息をついた。
「それならここは真夏の夜の夢に相応しい」
「にゃにそれ」
「シェイクスピアだ、陽気な夜の地回り」
「なにそえ」
「役どころがお前にぴったりだ。さて問題はどうやって認識を合わせるかな」
見上げるとすっかり陽は落ち、人工的な光が遊園地中を妖精のように舞い踊っていた。
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