セレンお嬢と首輪付きの馴れ初め

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 リンクス養成施設の一つ、「Days 5」 現在戦場で活躍中の連中も、既に海中で冷たくなっている連中も、大抵はここを通る。独立傭兵として0からスタートできるのは、一部の限られた名家のボンボンくらいだ(或いはその逆か)。 しかし最近はどうも事情が変わってきたのか、企業直々にリンクスを育て上げるという動きが活発化してきている。私が現役だった頃を思えば、正直、信じられん事実だ。  おぉ!スミカ君じゃあないか!?全く、相変わらずの仏頂面だね。君は。 あぁ、アンタか。久しぶりに会ってみればその軽い嫌味、アンタも相変わらずみたいだな。 私の古巣のお友達…名前は何だったか忘れたが、かつて「レオーネメカニカ」の兵器開発に携わっていた男…そして、いけ好かないヤツだった。 よかった、やっぱり君だったか。あれからそんなに経っていないと思ったが、君…少し雰囲気が変わったかね? どーだか… セレンが視線を外した先には、今期の有望株と評されるリンクス達がデモンストレーションを行っている。派手な動き、慎重な動き、ノロマなヤツから走りすぎなヤツまで、今期は…  噂で聞いたのだがね、君、オペレーターをやるんだって?復帰するつもりは無いのかね?私、いや、我々IUはいつでも歓迎して (ちっ、まだいたのか) いや、申し訳ないがそのつもりはない。少なくとも、今のインテリオルにはな… 今の? この男に私がウンザリしていた矢先、凄まじい轟音が重厚なガラスを超えて全身に衝撃を与えた。私は膝をつきかけ、地面に手の平をやる。 全く、どいつもこいつも…今度はいったい  おい!あのAC、ちょっとマズぃんじゃないか? ここの職員は何やってんだよ!?あれじゃテスト中に死んじまうぞ! 私が顔を上げた先には、防戦一方となって滅茶苦茶な動きをしているACと、暴走して暴れ回っている試験用の自律型ノーマル数機であった。  おい!あのAC丸腰じゃないか! そ、そらアンタ…ここのこの演習は、回避率を測定するための… 馬鹿か貴様!今は非常事態だろぉ! このままではAC諸共あのリンクスも、こんな場所でみすみす死ぬことになるだろう。戦地で散るわけでもなく、こんなところで。そんなことが、あっていいのか? おっ、おい!スミカ君!その先はコジマ粒子の濃度が___  ダメだ…さっきの衝撃で制御室にオートロックがかかってしまったようだ。だが幸いなことに、あの機体へ音声通信を繋ぐことには成功した。  聞こえるか!?そこのAC! 返事は無かったが、あの機体の素振り、恐らく、聞こえている。 いいか!今から私がお前に指示を出す!生き残りたくば従え!いいな!? 相変わらず返事は無いが、例の滅茶苦茶な動きが少しずつ落ち着きをみせていた。よし、では… 丸腰のお前に朗報だ。その周辺の床にある巨大なハッチが見えるか?それを無理やり外して、ノーマルどもにぶん投げるんだ! 荒唐無稽な指示にも関わらず、ソイツはそれをやってのけた。巨大なハッチをフリスビーの如くノーマルに撃ちつけ、一機、また一機と、撃墜してみせる。 いいぞ!そのまま続けるんだ。どの道、それ以外の策は無いのだからな____  自律型ノーマル機暴走の原因は依然として不明。養成所の責任者、並びに安全管理に携わっていた職員は、その日のうちにこれについて謝罪した。施設は”しばらくの間”閉鎖とし、安全性の見直しが完了したのち再開、とのことだ。 ちなみに、他の地区に点在する養成所はこんな事件があったにも関わらず、当然の如く平常運転だ。全く、世も末だな。 …おい、聞いているのか?  持っていたコーヒーカップを受け皿にカシャりと置いて、ヤツに視線を向ける。ソファーにだらしなく身を投げ出しているアイツは、背中でも返事はしない。だが肩の動きからして、笑っているのか?コイツは? 全く、お前ってやつは… 私は思わず立ち上がり、ヤツの首筋に手をやった。すると、ようやくコイツはこっちを見返してきた。憎たらしい上目遣い。その瞳に映し出される感情は、燃え上がるような闘志、渇望、そして、好奇心… 信じられないヤツだった。あんな目にあっても、まだ戦場に赴く気でいるらしい。大したタマだ。だが、こいつぁ面白くなると思った。多分、ひょっとすると、コイツは私より優れたリンクスになるかも知れない。 コイツの可能性を、私は見たくなったんだ___
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