カイダン

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カイダン

真っ暗な場所にいる。視界は闇。無音。そこに座っている私。ブォーンと微かな耳鳴り。そして微かな焦り。ブォーン…ブォーン…増幅する音。全身の毛が逆立つ。下から?。恐る恐る立ち上がる。バン!はっきりした音。はっきりとした悪意。バン!バン!バン!音は少しずつ大きくなる。下から?何かの気配が…上がってくる。視界が闇に包まれた場所で、咄嗟に逃げようと走りだす。ドン!右脛に激痛が走る。段差に足を打ち付け転ぶ。右腕と鼻にも激痛。バン!バン!バン!さらに音は近づいて来る。激痛が教えてくれた。ここは階段。逃げなきゃ…逃げなきゃ!バン!四つん這いであわてて真っ暗な階段を上る。涙が出る。たぶん鼻血も…出てる。怖い。怖い。バン!バン!バン!木製の階段が叩かれる音。怖い。怖い。怖い。恐怖感を誤魔化す様に自分が上る時にわざと音を立てて階段を登る。バン!階段を登るほど明るさが増したのか、視界が開けて来る。螺旋状の木製の階段。もしかしたら、上には出口があるのかも…。僅かな希望を感じた途端。バン!バン!バン!バン!もうすぐ下まで何かが近づいて来た。火事場のなんたら。バン!私は必死で階段を這い上がる。確実に階段を上るほど明るさが増している。痛っ!右脛と鼻は思いの外深傷を負っているようだ。バン!バン!パシッ!。?…何かが右足に触れた!手だ。私の右足を掴みかけた。ゾワッ…。逃げなきゃ!上は明るい。あそこまで辿り着けばきっと助かる…はず…。もう視界ははっきりして来た。出口は近い。「待てよ!」すぐそばから聞こえる声。「ギャー!」自分でも驚くほどの絶叫をあげた。どこかで聞いた声?とにかく逃げなきゃ。必死になって階段を上がる。背後を振り返りたいが、心がそれを拒否する。「残念でした。捕まえた〜!」冷たい身体が私を完全に捕獲した。絶望に打ちひしがれて振り返る。鼻が大きく横に裂けた血まみれの私だった。 「じゃあ…私は? だぁ〜れぇ」
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