衝立越しの君の声

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 午前中から猛暑が続いた夏の日の夜。  玄関のドアを開けると、むっとした熱い空気が顔全体に纏わりついた。  住み始めてそろそろ一年になる一人暮らし向けのマンション。日中風を通していない1DKの狭い部屋は、仕事から帰ってくると暑くてたまらない。  玄関を開けた瞬間に襲ってきた蒸し暑さが、ただでさえ落ち込んでいる私の気持ちをさらに底の方へと引っ張っていく。  窮屈なハイヒールを玄関の三和土に雑に脱ぎ捨てると、私は真っ直ぐに冷蔵庫へと向かった。  小さな冷蔵庫の中には、ヨーグルトとお茶。あとは、数本の缶ビール。  料理をしない私の家の冷蔵庫には、ほとんど何も入っていない。そこから一番冷えている缶ビールを一本取り出すと、プルタブを指で押し上げながら部屋の窓を開けた。  窓を開けた数秒後に、夏の夜風がすっと頬を掠める。心地よいはずのその風が、なんだか憎たらしい。  見えるはずもない過ぎ去った風を睨むと、私は網戸を引き開けてベランダに出た。
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