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1 ヒミツでフシギな関係!?
「結木さん、ユーレイが見えるってほんとう?」
ある日の一人の帰り道。
後ろからそんな声をかけられて立ち止まった。
ふりむくと、そこにいたのはクラスの人気者の男子・八神優介(やがみ ゆうすけ)くん。
わたし・結木玲那(ゆうき れな)は、ちょっとだけおどろいてしまったことがバレないよう、落ちついたフリをして答える。
「……なに言ってるの? そんなわけないじゃん。」
そう言って、また前を向いていそぎ足で歩きだす。
だって、女子にモテモテの八神くんと話しているところをクラスの人に見られたら、なにを言われるかわからない。
小学校卒業まで、あと一年。
できるだけ目立たず、おとなしくしているんだ……!
……って、思ってたのに。
八神くんはなんと、わたしの後ろを追いかけてくる!
「な、なんでついてくるの⁉︎」
「いや、みんなウワサしてるし、気になってさ。」
「……」
みんながしている、ウワサ。
それにはいくつかのパターンがある。
『六年一組の結木玲那は、ユーレイが見える』
『結木玲那は、ユーレイと話している』
『結木玲那には、ユーレイの友だちしかいない』
……大まかに言うと、こんなところ。
わたしは八神くんと正面から向き合うと、こぶしをぎゅっと握りしめて口を開く。
「やだな。八神くんまでそんなの、信じてるんだ。」
四年生の頃に転校してきたらしい八神くんとは、今年はじめて同じクラスになった。
まともにしゃべったことがあるわけじゃないけど、いつもクラスの中心にいる八神くんは、キラキラしていて。
やさしくて、いつも笑ってて。
……そんな、くだらないウワサなんて、気にしない人だと思ってた。
すると八神くんは、わたしの目をじっと見ながら言った。
「クラスのやつらは信じてないみたいだけど、……俺は、本当なんじゃないかって思ってたんだ。だって結木さん、よく何もないところ見てるし。」
「……!」
うそ、わたし、教室で矢神くんに見られてたの?
すみっこの席のわたしは、だれの目にも止まってないと思ってたのに。
急にはずかしくなってうつむくと、八神くんの足もとに目がいく。
彼の黒いスニーカーに、まだら模様の野良ネコがじゃれついてきた。
その瞬間、
「いてっ……なんか、足が急に、」
八神くんは顔をゆがめて、そこから後ずさる。
違和感を感じて右足をおさえた彼に、ネコはまたすり寄っていく。
わたしはそのネコの……『半透明』のひたいを、ペシッとたたいた。
「! こら、だめだよ、いたずらしちゃ。」
『ニャ〜……。』
怒られたとわかったネコは、悲しげな声で鳴いて、その場を去っていった。
よかった、悪い霊じゃなくて……。
「……あ。」
そこでハッとしたわたしは、おそるおそる八神くんの顔を見る。
そこにいたのは、おどろいた表情の彼。
それが、みるみるうちに笑顔に変わって。
「……ほら! 俺にはなにも見えなかったけど、なにかいたんでしょ⁉︎」
なんだかうれしそうな様子で、肩にふれてきた。
……い、いきなりキョリが近い!
男子とこんなに接近したことがないわたしは、かたまってしまう。
「今、たぶん助けてくれたんだよね? ありがとう!」
まぶしい、太陽のような笑顔を目の前にしたら……なんだか、わたしの力は抜けてしまった。
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