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昼休みに、四階で。
それは、八神くんの周りで起きている「不思議なこと」が解決するまで続くのかな。
だとしたら、あの女の子の霊をどうにかしない限り、ずっとこのまま……?
「ねえ、結木さん。八神くんとほんとに付きあってるの?」
すると、クルッとこちらをふりかえった花本さんが、興味津々といった様子で話しかけてきた。
「えっ⁉︎ ち、ちがうよ。そんなわけない!」
「そうなんだぁ。でも、仲よさそうだよね。」
花本さんはニコニコ笑っているけど、興味があるのはわたし自身なのかな。
それとも……。
「仲がいいわけじゃないよ。ただ、話しかけてくれるから話すだけで。」
そう、相談してもらってるから、それに答えているだけ。
自分で言った言葉なのに、なぜだか胸の奥がチクッと痛んだ。
昼休み、こっそりと人気のない四階へ来ると、屋上へ続く階段の前に座った八神くんが手招きをした。
もちろん、屋上のとびらのカギはしまっている。
「なんかごめんな、ヘンなウワサばっかりで。聞いてきた男友達には違うって言っておいたから。」
「ううん、わたしは大丈夫だけど……。」
わたしより少し背が高い、八神くんの顔を見上げる。
気のせいかな。
なんだか少し、疲れて見える。
目の下にはクマができてるし、顔色だって良くない。
「……なにか、あった? 大丈夫?」
そう聞くと、八神くんはおどろいた表情を浮かべた。
そして、小さくため息をついて、
「昨日とか、すげー暑かったじゃん? なのに俺、なんか寒くてぜんぜん眠れなかったんだ。」
って、言った。
その言葉どおり、昨日はずっとむし暑かった。
まだ春なのに、長袖のパジャマで汗をかくぐらいだったんだ。
それなのに、八神くんは眠れないほど寒かったらしい。
「……八神くん。」
「ん?」
「あの、その……。」
『八神くんに、女の子の霊がとりついているかもしれないんだ』
そう言いかけて、口を閉じる。
だって、伝えたところでなにもしてあげられない。
それに、昨日のはわたしの見まちがい、っていう可能性もある……よね?
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