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八神くんの前でなら、素直な気持ちで話すことができる。
ちょっとずつ、他の人ともリラックスして話せるようになりたいな。
今のわたしならがんばれる、そんな気がするんだ。
ちょっとだけ照れくさいようなふんいきになって、二人とも無言になる。
ぱちっと目が合って、今までよりドキッとした、そのとき。
『ガタンッ』
……屋上へのとびらが、きゅうに大きな音を立てる。
「びっ、くりした〜。風かな?」
「た、たぶん……。」
今日の天気は気持ちいいぐらいの晴れで、ポカポカあたたかくて。
音がなったのも、その一回きり。
ぶあつい鉄のとびらを揺らすような風が吹くなんて、思えない。
もしかして、これ……。
考えたしゅんかん、パタパタと階段を降りていくような気配がして––––。
「……八神くん、ごめん! 先に教室もどってて!」
「えっ⁉︎ お、おい!」
わたしは思わず、そこからかけ出していた。
だって、これは「チャンス」だって思ったから。
八神くんにはずっと、笑っててほしいって思うから……。
「ま、待って!」
呼びかけると、足音の持ち主はピタリと止まる。
そして、すごくびっくりしたような顔で、ふり返った。
……その目はきっと、「自分のことが見えるの?」と言っている。
きんちょうしながらも、『彼女』の顔をまっすぐ見ながら聞いた。
「……あなたは、だれなの……?」
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