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「……ネコの霊がじゃれてたの。ただ、ここから追いはらっただけ。」
「ネコか〜。すごいな、全然気づかなかったよ。」
「悪いものでは、ないと思う。……あ、今の、だれにも言わないでね……!」
「わかってるって!」
そう、みんながしているウワサは、本当のこと。
実はわたし、本当に幽霊が見える。
五年生の終わりぐらいから、ぼんやり……ほんとにちょっとだけ、見えはじめたんだ。
……とは言っても、見えるのは自分の近くにいる霊だけ。
それも犬やネコや鳥……動物が多いんだ。
それに、今みたいに「あっちに行け」ってその場から追いはらうことはできるけど、マンガや小説みたいに魂を「成仏させる」ことなんてできない。
つまり、ほとんど「見えるだけ」なんだよね。
こんなチカラ、なんの役にも立たないし……霊を目で追ってたら、「変なやつ」あつかいされるようになっちゃったし、いいことない。
新しいクラスになってからはなるべく見えないフリをしていたけど、ウワサは消えなかった。
でも、まともに友だちができないのは、この人見知りな性格が原因なのかもしれないけど……。
「……だれにも言わないけど、その代わりに。」
八神くんの声に、パッと顔をあげる。
さっきまでとはちがう、真剣な表情。
わたしの肩に置かれっぱなしだった手の力が、ギュッと強くなる。
「お願い。俺のこと、助けてほしいんだ……!」
……え?
真っすぐな目から必死な様子が伝わってきて、ふざけているわけじゃないということがわかった。
「た、助けてほしいって、なにを?」
おそるおそる聞くと、八神くんはようやくわたしの肩から手をはなして。
今度は自分の肩をおさえながら言った。
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